文具と雑貨のお店 プチチケット
petit-ticketで扱う商品をテーマにしたフィクションのショートストーリー。
〜petit-ticketのある風景〜
嬉しいナヤミ
まさか彼女からチョコレートを貰えるなんて。
彼女の事は、同じクラスになった時から気になっていた。
背が低い。
色白。
おとなしそう。
休み時間になると、鞄から文庫本を取り出して読み耽っている。
今まで僕があまり出会った事の無いタイプだ。
そんな彼女と仲良くなったきっかけも、やはり本だった。
ある日、授業で出された読書感想文の課題に対し、普段殆ど本を読まない僕は、一体どんな本を読んでいいのか
さっぱり分からず、途方に暮れていた。そしてその時隣の席だった彼女に軽い気持ちでどんな本が良いのか訪ねてみた。
「やっぱり、好きな本が書きやすいと思うよ。好きな作家とか。」
「自慢じゃないが好きな作家を語れる程、本は読んでないんだよ。オススメって何かない?」
「じゃあ、私の大好きな作家の本を貸してあげるよ。大丈夫、読みやすいの選ぶから。明日持って来るね。」
翌日、彼女は僕に1冊の文庫本を貸してくれた。
彼女の貸してくれた本はとても面白く、僕は無事に課題をクリアすることができた。
「ありがとう、お陰で課題も何とかなったよ。この本も面白かった。この作家の本をもっと読んでみたい、そう思ったよ。」
「じゃあ、他の本も貸してあげるよ。」
「本当か!悪いな。」
「ううん。同じ作家の事が好きな人がいたら嬉しいし。同じ本の事で一緒に話が出来るって、何だか素敵だし。」
それから僕は彼女から借りた本について話をする事が増え、そのうち僕が買った本を彼女に貸してあげたり、
やがて本以外の話もするようになった。
仲良くなってみると、彼女が以外におしゃべりな事や、良く笑う事など、色んな事が分かって来た。
そして僕は彼女の事が好きになった。
そんな片思いと思っていた彼女からもらったチョコレートには、当然のように手紙が付いていた。
手紙には、僕にとってとても嬉しい言葉が書かれていた。
彼女に、何をお返しすれば良いのか。チョコレートをもらってから、そればっかり考えていた。
彼女が喜びそうな物。
彼女と僕が仲良くなったきっかけに因んだ物が良いだろう。
そう考えて、僕は彼女に栞を贈ることにした。
本が大好きな彼女は、きっと毎日栞を使って、その度に僕の事を少し想ってくれる。こんなに嬉しいことはない。
僕は彼女のイメージに合う栞を探して、街中の本屋、文具屋を回った。
その栞を見つけたのは、町外れの小さな文具屋だった。彼女のイメージにぴったりだ。
メダイがとても可憐に、でもしっかりと主張している。
彼女にこれを渡すとき、僕は彼女に何と言おう。最初に借りた本からフレーズを拝借しようか。
やっぱり手紙を付けるのが良いだろうか。
嬉しい悩みって、良いものだ。
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