文具と雑貨のお店 プチチケット
petit-ticketで扱う商品をテーマにしたフィクションのショートストーリー。
〜petit-ticketのある風景〜
課長
この部署に来てほぼ1年。
仕事以外で初めて課長と話をした。
彼は見るからにカタブツで、とても几帳面に見える。
それに対し、私は外見はチャラチャラしてるし内面もテキトーに生きている。
課長は私にひと言言いたそうだが、社内の成績が良い私には強く言えないようだ。
そんな私と課長なので、この1年仕事以外で会話する事がなかったのだ。
ところがある日の昼休み。
「ちょっといいか?」と突然課長が私の席にやってきた。
私は”いよいよ注意されるのか”と思い、慇懃無礼に「何ですか?」と答えた。
「君の使ってるポップなボールペン、どこに売ってるのかと思って。」
「ハ?!」
私はまさか、この課長から「ポップ」という言葉が出てくるとは思ってなかっただけに
持っていたペンを落としてしまった。
「小さい声でお願いするよ。」
課長はペンを拾い上げ、ハンカチでふいてからデスクに置いてくれた。
「実は娘が中学入学で。お祝いにあげようと思ってね。ただ、私はこういうものにはうとくてね。
君ならいろんなアドバイスをくれると思ったんだ。」
私は課長が意外にも(と言っては失礼だが)家族想いな事に驚き、と同時に
娘さんの趣味を理解している素敵なお父さんに見えてきた。
「これはネットで見つけたんです、HEMAっていうオランダのスーパーのグッズなんですけど
デザインがかわいいのがいっぱいありますよ。アドレスは・・・」
私がいつもネットショッピングを楽しむサイトを教えてあげた。
「ありがとう、きっと娘も喜ぶな。」
「いえいえ、お役にたてて何よりです。・・・私課長とは絶対話が合わないと思ってたんですけど
娘さんとなら楽しい話ができそうです!」
「私は君が思ってるほどカタブツな人間じゃあないぞ。このサイトで自分用にも何か買おうと思ってるし。」
「じゃあ、何か買ったら見せてください。私がポップ度を評価してあげますよ」
「え〜!お手柔らかに頼むよ。」
そういって、課長は自分の席へと戻っていった。
私が教えたアドレスの書かれた紙をひらひらさせて。
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